映像技術は解像度から「現実感」の追求、すなわちHDRへと進化しています。

特に、シーンごとに最適な画質調整を可能にする「動的メタデータ」を持つHDR10+とDolby Visionは、プレミアムHDR規格として市場で対立してきました。

HDR10+は、プロプライエタリなDolby Visionに対抗し、サムスンパナソニック20世紀フォックスが主導するオープン規格として誕生しました。

一時は苦戦したHDR10+ですが、世界最大のテレビメーカーであるサムスンの巨大なハードウェア基盤 を背景に、2025年3月のNetflix対応、そしてDisney+がHuluタイトルからHDR10+サポートを開始したことで、グローバルなストリーミング市場において両規格の「共存」が常態化しつつあります。

しかし、日本市場は独特の状況にあります。

放送はHLGが採用され、国内メーカーはソニーがDolby Visionを優先し、パナソニックやTVS REGZAが両対応という分裂状態です。

結果として、HDR10+非対応のテレビを持つ日本の消費者は、グローバルサービスの最新画質メリットを享受できず、「HDRのガラパゴス」化が進行していると指摘されています。

【ディンコの一言】

日本のHDR市場は、放送のHLG固定とソニー・サムスンの代理戦争の板挟みです。

Netflix/Disney+の採用は、サムスンのハードウェアシェアが規格の技術的な優位性を凌駕した市場力学の勝利。

「マルチフォーマットの共存」というグローバルな現実に適応するため、国内VODはデュアルフォーマット戦略への舵取りが急務です。